気軽に楽しむ リウマチ散歩
~感染症対策~

監修慶應義塾大学病院 リウマチ・膠原病内科 教授 金子祐子 先生

気軽に楽しむ リウマチ散歩
~感染症対策~

監修慶應義塾大学病院 リウマチ・
      膠原病内科 教授 金子祐子 先生

リウマチ散歩_感染症対策

お出かけの際には「目には見えないリスク」にも注意しましょう。関節リウマチは免疫がうまく働かないことで関節の痛みや腫れを引き起こす疾患であるため、免疫機能の異常や治療薬によってウイルスや細菌に感染しやすく、風邪などでも重篤化しやすい傾向があります。 では、効果的な感染症の対策はどうやって講じればいいのでしょうか。もし体に異変を感じたら、どう行動すべきかをご紹介します。

なぜ感染しやすくなるの?

細菌やウィルス

関節リウマチの治療は薬剤の進歩にともない大きく発展してきました。疾患とうまく付き合っていくためには、薬剤の副作用によって免疫力が低下することも理解し、生活習慣の見直しなどを含めて「自分の体の状態」を把握しておくことが大切です。



●免疫細胞が敵を正しく認識できない

ウイルスや細菌から体を守る役割を担う免疫細胞。自分の関節の組織を敵だと認識して、誤って攻撃してしまうことで起こるのが関節リウマチです。関節の結合部分は丈夫な膜状の組織「関節包」が覆っていて、その一部である「滑膜」が潤滑油となる関節液を分泌します。免疫細胞がこの「滑膜」を攻撃することで、関節組織が破壊されてしまうのです。



●治療薬の副作用を把握しましょう

関節リウマチの治療は「抗リウマチ薬」やバイオテクノロジーでつくられる「生物学的製剤」の登場などによって大きく進歩しました。これらは免疫を調整して症状を緩和するもので、副作用として免疫力の低下を招くことがあります。 関節リウマチの治療には、症状などに応じてさまざまな薬剤が用いられます。自分が服用している薬の特徴や副作用について知っておきましょう。



●「おかしいな」と思ったら医療機関へ

発熱やせき、息切れ、だるさ、寝汗などの症状があり「なんだか体調がおかしい」と感じたら、すみやかに受診を。受診時に服用中の薬に関する情報などを医師に伝えてください※。 ※新型コロナウイルス感染症が疑われる症状がある場合は、各都道府県の「帰国者・接触者相談センター」へご相談のうえ、医療機関に電話で相談しましょう。



●自己判断は禁物

関節リウマチは、肺の病気を合併するリスクが高いことも知られています。せきや息苦しさが続いたとき、それが感染症によるものか、薬の副作用が影響しているのか、それとも関節リウマチに起因するのか。自分で見きわめるのは難しいでしょう。特に高齢者の肺炎は深刻な事態に至ることも少なくなく、すみやかな受診、治療が重要。自覚症状がないときにも、定期的な肺の検査を実施して状態を確認しておくといいでしょう。

関節リウマチ自覚症状

こんな感染症にご注意!

感染症の疑い

感染症の症状の程度は、ウイルスや細菌といった病原菌の侵入や体内での増殖をどれだけ防ぐことができるかという点に左右されます。免疫力が低下していると、普段なら防げるはずの感染症にもかかってしまうことがあります。早い段階で気づいて対処できるよう、まずは「感染症を疑う」習慣をつけましょう。



●免疫力が低下したときにかかりやすい感染症

【細菌性】非結核性抗酸菌症、レジオネラ肺炎など
【真菌性】カンジダ症、ニューモシスチス肺炎など
【ウイルス性】ヘルペス、サイトメガロウイルス感染     症など
【原虫性】トキソプラズマ症、クリプトスポリジウム     症など

感染症を予防するためのポイント

「ウィズコロナの時代」といわれ、感染症対策への関心は大きく高まりました。三密の回避やソーシャルディスタンスなど、より注意深い行動が求められるようになったことは間違いありませんが、感染症予防の基本はこれまでどおり「規則正しい生活習慣」や「外出時のマスク」、「手洗い」などがキーワードです。



●バランスのとれた栄養を摂取する

ひとの「免疫力」は、さまざまな免疫細胞の複合的な働きによって決まるものです。例えば「ある特定の食材が免疫力アップに役立つ」と聞いたからといって、そればかり摂取するのはおすすめできません。栄養バランスのとれた食事のほか、疲れをため込まない、適度に運動するなどを心がけ、できるだけ規則正しい生活を送ることが重要です。

バランスのとれた食事



●規則正しい睡眠を確保する

体調を整える上で欠かせないのが「十分な睡眠」。コロナ禍によって規則正しい睡眠を維持できなくなり、「睡眠障害に悩まされるようになった」という人もいるようです。生活のリズムを一定に保つことを心がけましょう。

十分な睡眠



●外出時にはマスクを着ける

一般的にマスクを着用する主な目的は「自分の飛沫を周囲に飛ばさない」ことです。ほかにも一般的にマスクを着用する主な目的は「自分の飛沫を周囲に飛ばさない」ことです。ほかにも保湿による感染症予防や、ウイルスが付着した指で顔に触れるリスクを減らすのに役立ちます。

マスクの着用




●汚れが残りやすい部分を重点的に手洗いする

手を洗う時間が長ければ長いほど、病原体などが減少することが分かっています。指の間や手首、指先、つめの間などの汚れが残りやすいといわれ、特に利き手の指先は顔にふれる頻度も高いため、しっかりと洗いましょう。

手洗い



●予防接種を検討する

関節リウマチの患者さんにとって、インフルエンザやかぜは大きな脅威です。毎年インフルエンザワクチンの予防接種を行うことも検討しましょう。また、65歳以上の高齢者における肺炎の原因菌で最も多いのは「肺炎球菌」です。肺炎球菌ワクチン予防接種も必要であれば検討しましょう。

注射

関節リウマチと口腔ケア

関節リウマチ口腔ケア

関節リウマチと口腔内の環境との関連が指摘されています。関節リウマチ患者さんが歯周病を患っている割合は大きく、口腔ケアが不足して環境が悪化することで嚥下機能の低下による肺炎などに至ることがあります。




●歯周病の進行が関節リウマチの悪化を招く可能性も

関節リウマチ患者さんが歯周病である割合は大きく、歯周病の重症度と関節リウマチの症状の関わりも指摘されています。手の痛みで歯をしっかりと磨けない、顎の痛みで口が開きづらい、唾液の分泌が少ない。こうした要因で歯周病が進行してしまうことがあります。



●口腔内の細菌が肺炎の要因に

口腔内で増えた細菌が誤嚥によって気管から肺に到達すると、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。



●定期的な口腔ケアを

口腔内の細菌の増殖を抑えるためには、毎日の歯磨きや、歯科での定期的な口腔ケアが重要。「痛そうだから」といって受診をためらっているうちに症状が進行してしまうと、治療の難度が上がり、通院期間も長期化しかねません。

まとめ

感染症対策は「できる範囲で、できることを着実に」が大切です。これまでどおり、栄養面に配慮した食事や適度な運動、マスク着用やこまめな手洗いといった取り組みを続けましょう。関節リウマチとともにうまく付き合いながら充実した暮らしを目指して、「いまできること」を探してみましょう。

チェックリスト

感染症対策をチェックリストにまとめました。ぜひご活用ください。

リウマチ散歩_


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