関節リウマチの治療法 薬物療法1,2)

監修東京医科歯科大学 膠原病・リウマチ内科学 教授 保田 晋助 先生

痛みや腫れをやわらげ、関節がこわれていくのを防ぐために薬物療法を行います。 薬物療法は、できるだけ早い時期に開始し、関節の痛みや腫れなどの症状がおさえられた、寛解とよばれる状態を目指すことが理想です。また、痛みや腫れなどの症状が強い方で、全身の関節に症状がみられる方であっても、できる限り症状が軽く、落ち着いた状態にしていくことが必要です。

薬物療法を行うにあたっての注意点
  • 薬によっては、患者さんの既往歴や合併症などにより使用できないこともありますので、治療の際には医師とよく相談しましょう。
  • 免疫に作用する薬により細菌などへの抵抗力が弱まる場合があります。日頃からうがいや手洗いなどをきちんと行うことが重要です。
  • インフルエンザワクチンは毎冬接種を受けることをご検討ください。肺炎球菌ワクチンは高齢者などに有効ですので、医師と相談してください。
  • 発熱や咳、息切れなどの症状がでたときはすみやかに医師に連絡することが肝要です。

非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)2)

痛みや発熱、炎症を改善する効果がある薬です。すみやかに痛みをとる効果が期待できます。また、炎症を軽くする効果はありますが、炎症の進行や関節がこわれていくのを防ぐ効果はありません。

ステロイド2)

炎症をすみやかにおさえますが、関節リウマチそのものを治すことはできません。他の薬の効果が得られないときや効果があらわれるまでの間、妊娠や副作用の理由で他の薬を使えないときなどに使われます。

抗リウマチ薬(DMARDs)ディーマーズ2)

炎症自体をおさえるのではなく、免疫の異常を調節して病気のいきおいをおさえます。異常な免疫機能に作用する「免疫調節薬」と、すべての免疫機能をおさえる「免疫抑制薬」の2種類があります。関節リウマチ治療の基本的な薬です。

生物学的製剤2, 3)

リウマチの原因になる細胞や遺伝子をおさえる目的で開発され、生きた細胞が作るタンパク質の薬を生物学的製剤とよび、特定の細胞の表面上や血中で作用します。炎症のもととなるTNF-αやIL-6といった特定のサイトカインの働きをおさえる「サイトカイン阻害薬」と、T細胞の働きをおさえる「T細胞阻害薬」の2種類があります。

低分子の分子標的薬3)

免疫に関わる細胞の中に入りこみ、標的とした分子の働きをおさえることで炎症反応をおさえます。

治療効果の確認方法について1)

関節リウマチでは、関節の痛みや腫れなどの症状や、血液検査などで治療の効果を確認します。一定の期間がたっても十分な効果がなければ、治療法の変更を検討します。なお、治療の効果を評価するために、DAS28、SDAI、CDAIとよばれる方法などが用いられています。

DAS28

DAS28は、病気のいきおい(疾患活動性)を数値であらわすものです。DASとは、「疾患活動性スコア」の英語(Disease Activity Score)の頭文字を取ったものです。28か所の関節について症状を調べることから、このような名がついています。来院されたときに、次の項目を調べます。

  • 圧痛関節数
    押さえたときに痛みがある関節の数を医師が数えます。
  • 腫脹関節数
    腫れている関節の数を医師が数えます。
  • 患者さんご自身による全般評価
    体調を「症状なし」から「体調が非常に悪い」までのスケール上で
    確認します。
  • 赤沈またはCRP
    血液検査で炎症の程度を調べます。
  • こうした項目をもとに、医師がDAS28の数値を計算します。
    DAS28の数値が低いほど症状が落ち着いていることを示します。

治療効果の確認方法_患者さんご自身による全般評価

SDAI、CDAI

CDAI(Clinical Disease Activity Index)、SDAI(SimplifiedDisease Activity Index)もDAS28と同様、病気のいきおいをあらわす指標です。CDAIは圧痛関節数、 腫脹関節数、 患者さんによる全般的評価、 医師による全般評価より計算します。SDAIはCDAIにCRPを加えて計算します。
数値の計算方法はそれぞれ異なりますが、得られた数値が高いほど、症状が強いことを示します。

参考文献

  • 1) 松田剛正他: 関節リウマチのトータルマネジメント.(公財)日本リウマチ財団 監, p20-96, p102-126, 医歯薬出版, 2011
  • 2) 公益財団法人日本リウマチ財団 編: 患者さんのための関節リウマチ治療ガイドライン. p15-46, 医歯薬出版, 2006
  • 3) 公益財団法人日本リウマチ財団教育研修委員会、一般社団法人日本リウマチ学会生涯教育委員会 編: リウマチ病学テキスト 改訂第2版. p13-26, p88-126, p522-526, 診断と治療社, 2016