監修静岡福祉大学 社会福祉学部 健康福祉学科 教授 田崎 裕美 先生
関節リウマチは、免疫の異常により様々な関節に痛みや腫れが伴う炎症が起き、これらの症状が持続する病気です。進行すると、関節が変形し、動かしづらくなることもあります。最近では治療薬も増え、症状をおさえられた状態「寛解」を目指せる方もいらっしゃいます。また、左右の関節で対照的に症状があらわれることがあります。
そのため日常生活での動作で、関節に負担をかけない工夫をすることが大切です。
では、どのようなことを工夫したらいいのでしょうか。カレーの調理を例に紹介しましょう。
※症状が出ている部位によって対処の仕方が異なります。痛みがあったり、負担に感じたりする場合は、作業を中断してください。
関節リウマチ患者さんにとって、重いものを持って移動したり、長時間立ち続けたりすることはとても負担になります。調理を始める前に移動距離を短くしたり、移動回数を減らしたりするよう工夫をしましょう。
材料や調味料、道具など調理で使うものは、最初にすべて調理台の上に並べます。このとき、使う順で並べておくと作業がしやすくなります。
移動するときは、重いものを持たないようにしましょう。例えば炊飯器をセットする場合は、炊飯器のお釜、お米、水を分けて運ぶようにすると、負担が軽くなります。
足に症状が出ている人は、立っているだけ、歩くだけでも負担になってしまいます。座って調理できるように調理台の位置、高さを工夫するとともに、物を運ぶ用にキャスター付きのワゴンを使うと便利です。 また、イスもキャスター付きにすれば、イスごと移動できるので、立ちっぱなしの負担だけでなく、移動や立ち座りの負担も軽くできます。
関節リウマチを発症すると「握る」という動作が難しくなる場合があります。握った手指に力が入らないため、ペットボトルのような口が小さくて固く閉まる容器を開けることができません。
そのような容器を開ける場合は、太くて握りやすい取っ手を付けて、体重をかけて回すようにしましょう。
(左)キャップオープナーのポイントは、キャップがしっかり掴めて、体重がかけやすい形かどうか。(右)片手で開けられるタイプのキャップの調味料も増えています。
柄がしっかり握れないまま包丁等を使うと落としやすく危険です。タオルを巻くなどしてグリップを太くし、しっかり握れるようであれば、既存の道具のままでも大丈夫です。
力が入らず滑ってしまい、危険を感じるようであれば、グリップが握れない人でも使える道具に変えましょう。
まな板は滑り止めマットで固定し、まな板の上は濡れ布巾を敷いて、食材が滑らないように工夫しましょう。
グリップを太くしても切りにくい場合は、ユニバーサルデザインの包丁がおすすめです。使う人に合わせてグリップの角度が変えられ、テコの原理で体重をかけて食材を切ることができます。
まな板はなるべく薄くて軽いものを選び、両端が折れているまな板を使えば、食材を切ったときに転がらず、そのまま鍋等に移動させられるので便利です。
指をかけて使うタイプのピーラーであれば、握れない人でも使えます。
使いにくい状態で料理をすると、ケガなどの事故の元に。特に下準備では刃物を使うのでとても危険です。やりにくいことは無理をせずに、体の状況にあった補助道具を使って、楽しく料理をしましょう。
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静岡福祉大学 社会福祉学部 健康福祉学科 教授 田崎 裕美 先生
「福祉のための家政学」と「乳幼児・高齢者のための食育」を専門としている。静岡県焼津市にて、焼津市食育推進計画策定委員長(2006~)、焼津市健康づくり推進協議会副委員長(2011~)、社会福祉法人まごころ理事(2014~)などを務める。
静岡福祉大学産官学連携センター依頼事業。