監修大阪市立総合医療センター 整形外科 医長 多田昌弘 先生
監修大阪市立総合医療センター 整形外科
医長 多田昌弘 先生
関節リウマチ患者さんの生活の質を維持する上で、関節に痛みや腫れが悪化しない程度にウォーキングなどの運動を取り入れることはとても大切です。関節を動かさない状態が長く続くと「動かせる範囲」が狭くなり、どんどん動かしにくくなってしまうこともあります。股関節や膝関節がうまく動かなければ外出する意欲もわきにくくなり、生活の質の低下にもつながります。そこで、今回は「関節に負担をかけにくい歩き方」をご紹介します。
「靴を履くと痛いので困っている」。そんな方もいらっしゃるかと思います。靴を選ぶときには、材質のやわらかさ、軽さ、着脱のしやすさのほか、サイズ感など履き心地がよいもの、関節を保護して負担がかかりにくいものなど、自分に合った一足 を探してみましょう。
購入した当時は自分にピッタリの歩きやすい靴であったとしても、長く履くうちに靴底がすり減ったり、型崩れしたりします。そうした靴を履き続けていると関節に負担をかけるのはもちろん、転倒の原因にもなりかねません。定期的に確認して、合わなくなってきたと感じたら修理や買い替えをお勧めします。
自分に合う靴を選んだら、次は靴を履く、靴を脱ぐ際の動作にも注意を払いましょう。歩行時の転倒リスクを低減する履き方や次に靴を履くときのこと、靴の寿命を長引かせることなども考えておくといいでしょう。
●︎履くときは靴の後ろにかかとを合わせ、空間ができないようにする。
●紐やマジックテープをしっかり締め、靴の中で足が前へ滑らないようにする。
●脱ぐときは、紐を上から順に緩めて(マジックテープの場合は剥がして)
履き口をしっかり広げる。履き口を広げておくと、次に出かける際に履きやすくなる。
歩くことによって、股関節や膝関節が固まってしまうのを防ぐ効果が期待できます。また、適度な運動は「筋力の維持」にもつながります。関節は周囲の筋肉によって支えられており、筋力が落ちてしまうと関節が動かしづらくなります。歩くときには、次のようなことを意識してみましょう。
●背筋を自然にまっすぐ伸ばした姿勢を保ち、首・肩の力は抜く。
●膝を曲げ気味にして、やわらかく足を運ぶ。
関節リウマチ患者さんの足の状態によっては、既製の靴では痛みを防いだり、関節への負担を減らしたりすることが難しい場合もあります。そんなときには膝・足首に装着するサポーターや中敷き、靴型をオーダーメイドした装具の活用といった方法もあります。主治医と相談して導入をご検討ください。
① 段差をなくす
自宅の玄関を出て公園などの目的地に向かう間、道にはあちこちに「段差」が存在しています。そして、注意すべきは屋外だけではありません。みなさんの家の中も、平坦な場所ばかりではないはずです。関節に大きな負担がかかる段差がある環境には、スロープの設置を検討してみましょう。
② 手すりを付ける
階段、トイレや浴室などに手すりを設置するのも効果的です。歩行時だけでなく、立ったり座ったりするときの関節への負担も軽減できます。転倒防止には、トイレや浴室に滑り止めマットを敷くのも有効です。
③ 住宅改修などの公的支援を活用する
症状が進行した場合、さまざまな公的支援も用意されています。例えば要介護度に応じて住宅改修費用の補助制度などを受けられる場合があるほか、「障害者総合支援法」にもとづく福祉サービス、「介護保険制度」による訪問リハビリテーションなどがあります。通院先の医療機関や地域包括支援センターなどで相談してみましょう。
治療を続けながら生活の質を維持する。そのためにも、適度な外出、運動の機会はできるだけ確保しておきたいものです。ぜひ、ご自分の歩き方や身につけているものを確認して、よりよい生活を目指してください。
お出かけをする際の靴選び。着脱の注意点、関節に負担をかけなi歩き方をチェックリストへまとめました。 ぜひご活用ください。