堀ちえみさんロングインタビュー 後編

堀ちえみさん
ロングインタビュー 後編

リウマチやガンの当事者として、さまざまなメディアを通じて自身の病状を公表してきた、タレントの堀ちえみさん。1980年代、彗星のごとく登場し、アイドル歌手として活躍。以来、精力的にタレント活動、歌手活動を続けてきた堀さんですが、そのきらびやかな歩みは、常に病と隣り合わせでした。今回は、リウマチ当事者の心情を踏まえながら、周囲の人々がどのようにリウマチ患者と接していけばよいか──といった視点から、堀さんのお考えを率直に語っていただきました。

リウマチの治療には、患者さんご自身の前向きな取り組みに加えて、周囲の理解や配慮も不可欠です。ただ、リウマチを患っている方々からは「病気について、まわりの人々になかなかわかってもらえない」といった声も聞こえてきます。

堀さん
私のブログのコメント欄にも、そうした悩みが書き込まれることがあります。また、講演などに出向いた際、「私もリウマチなんです」「周囲から理解してもらえず、悲しい」といった声を直接耳にすることもあります。家族から「なんなの、その病気は?」「見た目では、なんともないじゃないか」などと言われて、どうしてもわかってもらえずに苦しんでいる患者さんは、おそらく皆さんが想像する以上に多いと思います。

理解してもらえないから、黙って、我慢してしまう人もいるでしょう。

堀さん
ええ、ご本人は本当につらいはずです。全身のあちらこちらで起こる痛み、身体が思うように動かない感覚、どんなに休んでも抜けないダルさといったリウマチの諸症状には、なった者にしかわからないつらさがあります。それなのに、家族や周囲の人々から「ちょっとした神経痛みたいなものでしょ」「単に家事をしたくないから、仕事をサボりたいから、なんだかんだと理由を付けているだけ」「怠け病じゃないのか」などと心無い言葉をぶつけられてしまう。

絶望感に襲われるでしょうね。

堀さん
痛くて、ダルくて、仕方なく横になっていると、家族から「またかよ」なんて冷たい声を浴びせられる、といった話を聞いたこともあります。

やはり、現状ではリウマチという病気に対する世間の理解が、まだまだ追い付いていないということなのでしょう。実はリウマチなのに病院できちんと診断してもらうことなく、治療も受けていない“隠れリウマチ”の方が多いそうです。その背景には、患者さん自身が「自分はリウマチかもしれない」となかなか疑わないことに加えて、周囲の理解が不足していることも、大きな理由として存在していると思います。それで、どんなにつらくてもただ我慢するだけの時間を重ねてしまうとしたら、これほど悲しいことはありません。

病気が進行して、外見からもわかるくらいの変形が起これば、さすがに周囲も気づくかもしれませんが、そこに至るまでには相当つらい思いをするはず。いまこの瞬間にも、まわりから理解してもらえないまま、黙ってリウマチの猛烈な痛みと闘っている方がいるかもしれないと思うと、本当に心が痛いです。

だからこそ、堀さんは積極的に自身の病気について発信しているところもあるのでは?

堀さん
そうですね。少しでもリウマチという病気について理解してもらえたら、ということはいつも考えています。

私がリウマチやガンなど自分の病気について臆することなく発信することに対して、さまざまな意見があることは知っています。ときには、心無い声が届くこともあります。でも、お世話になっている先生がたや、周囲で支えてくださる方々から、「声を上げ続けてほしい」「どんどん発信していってください」と応援していただいていることに、私なりに応えていきたいんです。

リウマチはまだまだ認知度の低い病気です。私が発信することによって、隠れリウマチの方を減らすことにささやかでも貢献できるなら、そして周囲の人々がリウマチという病気について理解を深めて、患者さんに対して温かく接することができるようなるなら……そう思って、私なりに取り組んでいるつもりです。

周囲の理解はもちろんですが、患者自身も自分の病気にきちんと向き合う姿勢が必要になりますね。

堀さん
はい。本人が、そして周囲が異変に気づいたら、まずはとにかく病院を受診することが大切です。そしてリウマチと診断されたら、本人が「自分はリウマチ患者だ」と受け入れて、前向きに治療に取り組む意識を持つことが重要になると思います。そうすると、次第に自分の身体のことがよくわかってきますから。

そのうえで、痛み止めなど医師から処方される薬をうまく使いながら、自分なりにリウマチと付き合っていく。ちょっと身体がキツイなと思ったときには、「いまは無理をしないでおこう」「少し横になろうかな」なんて先回りで対応することを心がける。そうやってリウマチと“共存”できるようになれば、日常生活でのつらさはだいぶ軽くなるはずです。

患者が積極的に病気に向き合うことは、周囲の理解を深めることにもつながるでしょう。家族も「リウマチはこういう症状が出る病気なんだな」と理解できれば、自分たちにできることがわかってくると思うんです。「『身体が痛い』と言っているときは、肩を叩いてあげると少し楽になるみたいだ」とか、「ダルそうにしていたら『無理しないで、横になったら』と休ませるほうが、回復が早いみたいだぞ」とか、ちょっとした気配りもできるようになるでしょう。

リウマチは、ストレスがかかると悪化することがある病気です。周囲に理解してもらえないことは患者にとってストレスになりますから、ますます病状がひどくなって、患者も周囲の人もさらに追い詰められてしまう可能性がある。まわりの理解と協力があって、はじめて自分の痛みをどうやわらげるか、といったことが冷静に考えられるようになると思うんです。

患者自身が病気にきちんと向き合うこと、周囲の人々が病気について理解することが同時並行で進んでいくのが理想でしょうか。

堀さん
そうですね。ただ、私は当事者なので、どうしても患者側からの見方が強くなってしまう面があります。

患者は「自分が病気になってしまった」という現実によって、すでに大きなダメージを受けているんです。周囲からなかなか理解してもらえないのは仕方のないことだ、と承知していても、つい冷静さを失ってしまうことがある。だから、できれば家族など身近な人たちが、まずは患者のダメージを理解して、心情に寄り添って、痛みや苦しみを察してあげてほしいなと思います。

とはいえ、私も家族も、はじめからうまく病と向き合えたわけではありません。リウマチの診断が出てすぐの場面では、私が家族に当たってしまったこともあります。あまりにも痛くて、つらくて、苦しくて……家族から言われたことに対して、つい敏感に反応してしまった。「あなたたちにこの苦しみは理解できるわけがない」「わからないから、そういうことが言えるんだ」なんて、きつく言い返してしまいました。

ただ、それに対して「ママこそ、家族の気持ちを理解していないよ」と悲しそうに反論されて、はたと気づいたんですよね。私がリウマチで身体がうまく動かないときに、肩を貸してくれているのは家族なんだって。

私もただ感情をぶつけるだけでなく、家族に対して感謝の気持ちを忘れてはいけない。いつも「ありがとう」という気持ちで家族と向き合おう。そう考えるようになりました。「どうして私のことをわかってくれないの?」と一方的に思いをぶつけるのではなく、こちらのことを理解しようとしてくれる相手に対しては、ちゃんと気持ちを寄せながら生きていこうと。

そうした思いを持てるようになることが「きちんと病気に向き合う」ということなのかもしれませんね。感情が追い付いてこないと、治療にも熱心に取り組めないでしょうし。

堀さん
ええ。そのためにも「もしかして、病気かも」と少しでも違和感をおぼえたら、まずは病院で診てもらうべきだと思います。

繰り返しになりますが、リウマチはまだまだ認知度が低く、正しい理解が広まっていない疾患です。でも、決して珍しい病気ではありません。中高年以上の方だけでなく、若い方でも発症する可能性がある病気でもあります。

倦怠感や関節の痛みなどが少しでもあるなら、ぜひ医療機関で検査を受けてみてほしいです。定期健診や人間ドックの血液検査では、リウマチなど膠原病について詳細に調べる項目がオプションであることも多いですね。

やはり、早期発見、早期治療がいちばんですからね。

【プロフィール】
堀ちえみ

堀ちえみさん

1967年2月15日生まれ。
大阪府堺市出身。

1981年に行われた「第6回ホリプロスカウトキャラバン」に優勝し、芸能界入り。1982年3月「潮風の少女」で歌手デビュー。1984年に出演したテレビドラマ「スチュワーデス物語」が大ヒットし、トップアイドルの一人として歌やドラマで活躍する。現在、7児の母。近年はテレビ出演のほか、教育や食育に関するトークショー、音楽活動など幅広い領域で活動を展開。家庭と仕事を両立しながら、多忙な毎日を送っている。