堀ちえみさんロングインタビュー 中編

堀ちえみさん
ロングインタビュー 中編

堀ちえみさん_「リウマチと共に生きる」ということ 中編(全3回)

1980年代にアイドルとしてデビューして以来、精力的にタレント活動、歌手活動を続けている堀ちえみさん。その華やかな活躍で注目される一方で、ガンやリウマチといった自身が経験してきた病について、ブログなどを通じて率直に語る姿にも、高い関心が寄せられています。インタビュー第2弾となる今回は、堀さんのリウマチ治療についてや、リウマチと仕事の兼ね合い、リウマチと共に暮らす日常生活での気づきや工夫などについて語っていただいた模様をお届けします。

堀さんは現在、どのようなリウマチ治療を受けられているのですか?

堀さん
いまは月に1回、病院で外来診療を受けています。毎回、血液検査をしているので、そこでリウマチに関係する数値などをチェックしてもらい、薬を処方してもらう……というのが基本ですね。病気に関して気になることがあれば、そこで先生に質問してアドバイスをもらったりします。加えて、3カ月に1回くらいの頻度で画像検査を受けています。

関節リウマチは膠原病のひとつなので、リウマチ患者がリウマチ以外の膠原病を併発することもあるようです。だから、定期的に通院して血液検査などを受け、他の膠原病の治療を開始するのが大切。「早期発見できれば、リウマチも、それ以外の膠原病も、それだけ進行を緩和できる可能性がある」といわれています。まあ、それはどんな病気も同じですよね。

あと、新型コロナウイルスが蔓延する前は、1週間に1回程度、整体院にも通っていました。そのくらいの頻度で行かないと、身体がかたまってしまうような感覚があるので。ひどいときは、自分の身体が岩になってしまったんじゃないかと思うくらいです。やはり、整体師の方に全身をほぐしてもらうとだいぶ楽になります。

ただ、いまは外出を必要最小限にするよう心がけているので、極力、家にあるマッサージチェアで身体をほぐすようにしています。

医療機関でリハビリは受けていないのですか?

堀さん
受けていません。比較的早期にリウマチが発見され、進行が抑えられたこともあって、いまのところリハビリは必要ない、というのが先生の見立てです。
ただ、自主リハビリというか、生活のなかで自分なりに身体のいろいろなところを動かすようにしています。たとえば、スマホを同じ姿勢で持っていたりすると、手首や腕がこわばってくることがあるので、スマホを握りながら手首を回すようにしたり。

それから、指先も意識して動かしていますね。こわばりがひどいときは、ペットボトルのフタを開けることすら大変なこともあるので、そんなときはオープナーなどの補助器具を使って無理をしないようにしますが、動かせるときはできるだけ動かすほうがいいかなと。手先を使えば、脳の老化を抑えることにもつながるんじゃないかと思って。

あとは、ストレッチですね。立ち上がった状態で夫と背中合わせになり、両手を挙げて手首を掴んでもらい、夫の背中にのってグーッと全身を伸ばしてもらう。これを毎晩、寝る前にやってもらっています。

堀ちえみさん インタビュー

痛くありませんか?

堀さん
日によって程度は違いますが、痛いですよ。ただ、我慢できないほどではない(苦笑)。これをやると全身がほぐれて、とてもいいんです。とくに肩のこわばりがだいぶ楽になりますね。先日、先生にこの話をしたのですが「無理のない範囲で身体を伸ばしたり、かたまらないように動かしたりするのは、とても大切です」とおっしゃっていました。

堀さんの場合、リウマチだけでなく、ガンなど他の病気についてもケアが必要かと思うのですが、治療に関してはどのように連携を取っているのでしょう?

堀さん
ガンの治療を受けるタイミングで、医療機関を一本化しました。現在は同じ病院のなかですべての病気を診てもらっているので、他の病気の状態を踏まえながら、リウマチの治療も進められています。診療科を越えて情報が共有され、チーム体制で治療にあたっていただいている形ですから、とてもありがたいです。

病院での治療に関連して、新型コロナが何か影響したりしませんでしたか?

堀さん
病院のリウマチ科から「できるだけ、これまでどおり来院してください」と助言されたので、外出自粛期間中も月に1回の通院だけは続けました。ガンについては「経過も良好なので少し期間を置いても問題ないでしょう」「コロナが落ち着くまでは通院も無理せず」となったのですが、リウマチについては定期的な受診がとても重要というお話でした。つまりはそれくらい、症状を抑えて、痛みを軽減させないと身体に負担がかかる病気なのだと思います。

痛みはストレスにもなりますからね。

堀さん
そうなんです。痛みを我慢し続けることは強いストレスになりますから、そのせいでリウマチが悪化してしまったり、他の病気を発症してしまったりするかもしれないそうです。また、新型コロナの影響で生活が変わり、自分でも気づかぬうちにストレスが溜まって、リウマチの痛みがひどくなってしまった患者さんも少なくないと先生から聞きました。

実は私も、外出自粛期間中は炎症反応の数値がガーンと上がってしまったんです。ストレスがかかるとリウマチは悪化しやすく、リウマチが悪化すれば痛みも強くなる。その痛みがますますストレスを強めてしまい、さらにリウマチの悪化につながり……という悪循環は、なんとしても避けたいところです。

継続的な治療がとにかく大事ということですね。

堀さん
ええ。定期的な受診と、指示どおりの服薬・投薬が欠かせないと思います。今回の新型コロナ禍で改めて考えたのですが、たとえば地震や台風といった自然災害で避難所生活を余儀なくされたりした際、リウマチ患者をどうケアするかはとても重要な課題ではないでしょうか。

慌てて避難したため、薬を十分に持っていないケースもありそうです。

堀さん
はい。それに慣れない避難生活によるストレスが病状を悪化させてしまう可能性もある。お薬が残り少ないとか、そもそも持たずに出てきてしまったとか、不安感もストレスになりますし。そもそも、リウマチは環境のちょっとした変化が痛みといった病状に現れやすい病気なので。

リウマチを患っていても、外見上はわからない患者さんが多いから、まわりの人に配慮してもらえない可能性もありますね。

堀さん
だからこそ、周囲にどうケアしてもらうか、しっかりと対策を話し合っておくことが大切だと思います。もちろん、患者自身も準備を怠らないようにしないと。絶対に薬が切れないようにしておき、何かあったときでもすぐに持ち出せるようにしておく、とか。

堀さんご自身は、どのような準備をされているのですか?

堀さん
病院を定期受診したときは、災害など緊急時の備えとして、また私の特殊な仕事の関係上、少し先の分まで薬を出してもらい、手元にストックしています。万が一、病院に行けなくても薬が切れないように、という準備ですね。あと、うっかり薬を持たずに出てしまっても出先で困らないよう、カバンには常に薬の予備を入れておくようにしています。さらに「お母さんが忘れているようだったら『お薬、飲んだ?』って言ってね」と家族にも伝えています。

出先で困らないように、ということに関連するかもしれませんが、仕事をするうえでもリウマチとどう付き合っていくか、どう備えていくかは、とても重要ですよね。

堀さん
そうですね。いまは適切な治療を受けていますし、どうしても痛みがひどいときは痛み止めを飲んだりして、自分なりに対応できる場面は多くなりましたけど、リウマチだとわかる前は本当に苦労しました。

以前、大阪で4時間の生放送にレギュラー出演していたのですが、とにかく身体がダルいし、途中で眠くて眠くて仕方なくなったり、痛みが出たりして、大変でしたね。屋外での収録で身体が冷えるとあちこちが痛み出したりするから、いろいろなところにカイロを貼って、しのいだこともあります。長時間のロケとか、泊まりがけロケなども、かなり不安でした。

ただ、痛みを感じていても、仕事となると笑顔で「はい!」と対応できてしまうんですよ。痛いな、ダルいなと感じていても、仕事では身体が動くんです。ただ、当然反動があって、帰りのクルマや飛行機のなかで「痛い~」と苦しむことも多かったです。痛みが強くなると、心臓がバクバクして息苦しくもなりますし。

堀ちえみさん インタビュー

家事についてはいかがですか?リウマチになって、困ったことも少なくないのでは?

堀さん
挙げていけばいろいろありますが、治療を始めてからは、かなり楽になりました。いまでも、朝起きてすぐは身体がこわばってうまく動けないこともあるのですが、日中になって身体が温まり、動くようになれば、それほど支障なく家事がこなせたりします。

たとえば、午前中の早いうちに洗濯物を干したりするとき、洗濯ばさみを指でつまんで広げられないことがあるから、子どもに手伝ってもらう。そのかわり、日中に2回目の洗濯をする際は、身体が動くから自分だけで対応する、とか。そんなふうに、できるタイミングで、できることからこなすようにするといいかもしれません。

また、ビンのフタが開けられなければ「ごめ~ん、このフタ開けてくれる?」、料理をフライパンからお皿に移すとき、うまく持てなければ「お手伝い、お願いできるかな」……といった調子で、部分的に家族の手を借りたりすれば、できることはかなり多いです。

生活のなかで、新しい方法を発見することもありますよ。雑巾がうまく絞れなくても、小さく折りたたんで、上から両手で押さえつけるようにして「うーん!」と重さをかけたら絞れることに気づいたり。工夫してみると「なんだ、できるじゃん!」ということは少なくないのでは。

「できないこと」をあげつらうのではなく、「できること」にフォーカスする感じでしょうか。

堀さん
そういう姿勢は、とても大切だと思います。これはリウマチに限った話ではなく、どんな病気も同じですよね。病気のために「できないこと」を数えるよりも、「できること」を見つけていくほうがハッピーじゃないですか。

それに、ちょっと見方を変えてみるだけで、面白い発見があったりしますからね。指の関節が痛いとき、コーヒーを淹れようとして湯気にあたったりすると、関節が温まって気持ちいいんです。「あぁ、湯気ってこんなに痛みをやわらげてくれるのか」と少し感動したり、「やはり温めるのって大事だな。冷えはよくないな」なんて気づかされたり。そういう感じで“共存”していく意識が、リウマチと付き合ううえでは肝要なのかなって。

前回もおっしゃっていた「“敵対”ではなく“共存”する」姿勢の大切さですね。

堀さん
はい。慣れてくるとおかしなもので、「あ、またリウマチが暴れだそうとしているな」とか、なんとなく気配でわかるようになるんです。大事な仕事が控えているようなときは、「リウマチ、お願いだから暴れないでね」「大人しくしていて」なんて、声に出して言っていますよ。家族もそれを聞いて「本当、そうだよね~」なんて笑っています。

堀さんは、一貫して前向きですよね。それは、もともとの性格なのでしょうか?
もしくは、意識的にポジティブであるよう努めているのでしょうか?

堀さん
う~ん……たぶん、病気が私をどんどん前向きにしてくれたのだと思います。病と向き合うにあたり、悲観的になってもいいことなんてありませんから。

もちろん、病気になれば落ち込みもしますし、「どうして私だけ」「健康な人が羨ましい」と卑屈な感情が湧いてくることもあります。でも、思考が内向きになってもロクなことはないし、なにより卑屈になっている自分が嫌なんですよね。

まずは笑って、できるだけポジティブに、外に向かって表現してしまう。そのほうが自分自身気楽ですし、周囲に余計な気をつかわせないことにもつながっていくのではないかと思うんです。私がブログなどを通じて、病気について隠さず発言するようになっていったのも、そうした考えがあったからなんです。

【プロフィール】
堀ちえみ

堀ちえみさん

1967年2月15日生まれ。
大阪府堺市出身。

1981年に行われた「第6回ホリプロスカウトキャラバン」に優勝し、芸能界入り。1982年3月「潮風の少女」で歌手デビュー。1984年に出演したテレビドラマ「スチュワーデス物語」が大ヒットし、トップアイドルの一人として歌やドラマで活躍する。現在、7児の母。近年はテレビ出演のほか、教育や食育に関するトークショー、音楽活動など幅広い領域で活動を展開。家庭と仕事を両立しながら、多忙な毎日を送っている。